家への要望を伝えよう

「ヒアリング」というのは業界用語で、主にお施主様の「要望を聞くこと」ですが、実はもっと深い意味があります。
ただ「要望を聞く」だけだと、お施主様が思いついた言葉にできることだけが伝わるのですが、実は言葉にできない、お施主様が気づいていない部分にも大切な要素がたくさんあります。
それを設計に組み込むために、要望という形で用意されていないことも聞きださないといけないのです。
例えば、
・広い洗面台が欲しいという要望があったら、なぜ、広い洗面台が欲しいのか。
・キャンプが趣味、ということだったら、どんなきっかけで、その趣味を始めたのか、
どんなスタイルのキャンプをしているのか。
・映画が好きということだったら、どんな映画で、どんな時間帯に見るのか・・・
・こどもの頃育った家や環境は?
など。時間の許す限りじっくりと聞いて掘り下げていくようにします。
なぜそんな細かいことを聞くのか?
我々設計者は、その場で、お施主様の要望一つ一つを判断するのではなく、事務所に持ち帰って考えます。
もちろん具体的な要望があることはなるべく優先するのですが、敷地条件、法規制、予算、機能性、デザイン性など、様々な要素の中で、要望も、物理的に相反することもあります。
ポイントは、優先順位をつけないといけない時に、お施主様と同じ判断ができるようにすることです。
お施主様の人生においての、住まいに関係する情報を設計者にインプットさせるつもりで話してもらうと、
より正解に近いプランニングができるようになると思います。
設計の終わり頃や工事監理に入る頃には当然、お施主様の好みや考え方も把握できるようになりますが、逆に、基本設計初期段階で0→1にするところが大切です。
最初にしっかりと時間を取ってヒアリングすることで、効果的な設計プロセスになると思います。
ヒアリング当日のやり取りや質問の仕方も大切ですが、実は、それまでにお施主様とどういった関係性を築いているか、設計者のキャラクターや立場なども大きく関係してきます。
設計周辺だけでなく、全体の仕組みで良い家づくりができるようにしたいと思っています。
(2021年4月24日ブログより抜粋)